天親菩薩の論、註解(ちゅうげ)して、報土(ほうど)の
因果、誓願(せいがん)に顕(あらわ)す。
往還(おうげん)の回向(えこう)は他力に由(よ)る、
正定(しょうじょう)の因は唯(た)だ信心なり。
仙経を焼き捨てられました曇鸞大師は、天親菩薩の『浄土論』を
註釈され、『浄土論註』を書かれて、ご自身の信心を述べられました。
そこには、私が報土すなわち浄土に生まれる因も果も、ともに阿弥陀
如来の誓願(本願)によることをあらわしてあります。
また、回向については往相と還相のふたつの回向があることを
あらわされています。回向とは、本来自分の功徳を他人にほどこして、
それによって浄土に向かうことです。
しかし曇鸞大師は、私が浄土に生まれる(往相回向)だけではなく
浄土で仏に成らせていただいた私が、浄土から還ってきて迷いの
衆生を救うはたらき(還相回向)も示されています。
親鸞聖人は、このふたつの回向がどちらも阿弥陀如来の他力
(本願力)によるものであると明白にされました。
そういう意味からも曇鸞大師の『浄土論註』は、浄土真宗の
本願他力のみ教えの根拠をなす書物といえると思います。
私が浄土に生まれる正しい因は、阿弥陀如来の願い(本願)を
聞かせていただくこと(信心)ひとつであり、それはすべて阿弥陀
如来の本願のはたらきによることです。
そして、そのことは法蔵菩薩が本願を起こしてくださった
ところにまでさかのぼることができるのでありましょう。