難行(なんぎょう)の陸路(りくろ)、苦しきことを
顕示(けんじ)して、易行(いぎょう)の水道(すいどう)、
楽しきことを信楽(しんぎょう)せしむ。

龍樹菩薩の有名な著書に『十住毘婆沙論(じゅうじゅうびばしゃろん)』
があります。このなかの「易行品(いぎょうぼん)」という部分に示されて
いる教えがあります。

仏教には八万四千の教えがあるといわれますが、その目的は仏になる
ということです。これに至るまでには、難行易行のふたつの道がある
ことを、龍樹菩薩は「易行品」に説かれます。

難行道とは、厳しい自力の修行によって長い時間をかけてさとりに
至る道です。それはちょうど山あり谷ありの厳しい陸路を歩くようなもの
です。易行道とは、本願他力の法によってさとりに至る道です。
南無阿弥陀仏を船にたとえ、易行道とはの上を船で渡って行く
ようなものだといわれます。

船のたとえは、乗る人の自力は何の役にもたたないことの意味と同時に、
健康に修行ができるものだけでなく、身体が弱くて厳しい修行ができ
ないものも、子どもも大人も、女性も男性も、一切分け隔てなく平等に
救われていく旨をあらわしているのです。

どんなに厳しい修行を行っても、死ぬまで消えない煩悩をかかえた
私にとって、さとりに至るすべは全くありません。そのような人間の
力の限界を知らせてくださるのもまた、易行水道であります。

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