釈迦如来(しゃかにょらい)、楞伽山(りょうがせん)
にして、衆(しゅう)の為(ため)に告命(ごうみょう)し
たまはく。南天竺(なんてんじく)に龍樹大士(りゅう
じゅだいじ)世(よ)に出(い)でて、悉(ことごと)く能
(よ)く有無(うむ)の見(けん)を摧破(ざいは)せん。
大乗無上(だいじょうむじょう)の法(ほう)を宣説(せ
んぜつ)し、歓喜地(かんぎじ)を証(しょう)して安楽
(あんらく)に生(しょう)ぜんと。
七高僧(七祖)の第一祖である龍樹大士のことを讃えられます。
大士とは、大菩提心をもった人ということで、菩薩のことです。
龍樹菩薩は、お釈迦さまが亡くなられておよそ七百年後にインド
に誕生されました。天文学・医学など多くの学問に優れた方で、
お釈迦さまが、楞伽山での説法で、南インド(南天竺)に大衆の為に
龍樹菩薩があらわれるだろうと予告されるほどの方でした。
私たちは、ものごとを有るとか無いとかにこだわり、自分に都合が
良いように分けて考えます。龍樹菩薩は、有無にとらわれる考え方
を摧破(打ち破る)して、仏教が中道の思想であることを体系化しました。
さらに、大乗仏教の中の無常の法を説きひろめ、みずから歓喜地
(菩薩の修行により真理を体得して、必ず仏になることが定まり、
喜びの思いがおこること。浄土真宗では、正定聚の位のこと)をさとり、
お浄土(安楽国)で仏に生まれることを願われました。
よって親鸞聖人は、龍樹菩薩の大乗無常の法こそ、阿弥陀如来の
本願念仏の道に他ならないと深く味わわれたのです。