本願の名号(みょうごう)は、
正定(しょうじょう)の業(ごう)なり。
ご本願とは、阿弥陀如来の根本の願いであることはすでに申したところです。
四十八の願いは、皆本願です。ただしその中でも、法然上人が選択本願と
示され、親鸞聖人は常にご本願の中心におかれたのが、第十八願です。
親鸞聖人の代表的著書『教行信証』は、四十八願の中から五つの願を
選ばれ、そこに聖人の信心の宗(むね)を語られたものです。｢行の巻｣は
第十七願、｢信の巻｣は第十八願、｢証の巻｣は第十一願、｢真仏土の巻｣
は第十二・十三願です。この五つの願に親鸞聖人は、ご自身のお浄土へ
の道を味わっておられるのです。
そしてこれら五つの願は、第十八願の中に皆おさめられるのです。
つけくわえますと、｢化身土の巻｣は、十九願・二十願が引かれており、十八願
の信心へのいわば到達の道すじが味わわれています。
さて十八願とは、｢たとひ我(われ)、仏を得たらんに、十方の衆生(しゅじょう)
至心(ししん)に信楽(しんぎょう)して、わが国に生まれんと欲(おも)ひて、
乃至十念(ないしじゅうねん)せん。もし生まれずは、正覚(しょうがく)を取らじ。
ただ五逆と誹謗正法(ひほうしょうほう)とをば除く。｣です。
詳しい説明は次にゆずるとして、阿弥陀如来は、衆生の口からわが名が
称えられるようにと十八願をおこされ、そして十八願を成就(完成)されます。
さらに、その願いのすべてを南無阿弥陀仏の六字の名号に仕上げてくださ
ったのです。
名号は、私のこころに届いて信心となり、私の口からお念仏としてこぼれて
くるのです。グチや悪口しか出てこない私の口からお念仏が出て来てくださる。
それはまさに、阿弥陀如来の願いが常に私にはたらいてくださっている
(すべて如来の願力によっている)証拠です。
私に届いた阿弥陀如来の十八願を、ナムアミダブツと聞かせていただいた
私は、如来の誓い通りに浄土往生が定まります。自分から称える念仏に
よって往生するのではなくて、阿弥陀如来の十八願のこころ(それが仕上
がったのが名号)こそが、正(まさ)しく、私が浄土に生まれることを決定した
業因(はたらき)というわけです。
