自死

※近年、自殺という言葉に代えて「自死」という表現が目立つようになりました。
それにはさまざまな背景がありますが、自殺という言葉にある嫌なイメージを
払拭するために、自殺という言葉の使用が遠慮されているようです。
また、残された家族にとっては、自殺の「殺」という字に含まれる罪悪性の
イメージにより、心の傷をさらに深くするということがあります。これらの配慮
の上、ここでは「自死」という表現を用います。


先日の新聞に'98の厚生省調べ、人口動態調査が載っていました。
それによると、自死する人は3万人を超えたそうです。
うちわけは、例年どおり50歳〜60歳の男性が突出して多いのです。

本当の理由はもちろんわかりませんが、私はその理由を、
50歳〜60歳の男性のもつ「孤独感(むなしさ)」に絞られると考えています。
この年齢を考えると、世のお父さん方はちょうど定年のころ。
それまで、家族のためお金(財産)のため名誉のためにと働いてきて、
やっとある程度満足した時、会社を定年します。

そして、お父さんを満足させていたはずの「○○のために」は、
なくなってしまいます。それらはいつかはくずれ、なくなるもの
だったのです。それらはお父さんを一生涯満足させ、
人生のよりどころになってくれるものではなかったようです。

お父さんの本当の生きがい・生きるよりどころは何なの
でしょうか。

自分は今まで何のために生きてきたのだろうか…。
これからどう生きていけばいいのだろうか…。
お父さんは、自分を振り返りきっとそう考えることでしょう。

しかし、すぐにそれを見つけることは、たやすいことでは有りません。
お父さんは孤独感にさいなまれながら、自分を見失っていくでしょう。
そして、そういう人を支える人間が少なくなっている昨今、
お父さんは悲しい道をたどるのかもしれません。

これらのことは、「自己」とは何なのかわからない、とあえいでいる
今の若い人たちにも当てはまる傾向にあるようです。

早く生きるよりどころを見つけてください。生きることのすばらしさ・
喜びに出あってほしいと願います。

「本願力にあひぬれば むなしくすぐるひとぞなき
 功徳の宝海みちみちて 煩悩の濁水へだてなし」 

親鸞聖人のお言葉が強く胸に響きます。

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