天親菩薩(てんじんぼさつ)論(ろん)を
造(つく)りて説(と)かく、無碍光如来
(むげこうにょらい)に帰命(きみょう)したてまつる。
修多羅(しゅたら)に依(よ)りて、真実(しんじつ)を
顕(あらわ)して、横超(おうちょう)の大誓願
(だいせいがん)を光闡(こうせん)す。

ここからは、天親菩薩(世親とも呼ばれる)の教えです。

天親菩薩は龍樹菩薩から200年後に北インドにお出ましください
ました。天親菩薩ははじめ、いわゆる小乗仏教の研究をされ多く
の著述を残されています。

しかし、小乗仏教の外道や大乗仏教に対して厳しく非難され、
天親菩薩の兄である無著(むじゃく)がそれを戒めました。
天親菩薩は、それを素直に聞いて大乗仏教を研究され、その
教説のすぐれていることを知り、大乗仏教に転向しました。

天親菩薩は、これまで大乗仏教を非難してきたことを後悔し、
舌をかみ切ろうとしましたが、「舌を切っても罪からは逃れられない。
その舌で大乗の教えを広めなさい。」と兄無著から諭されて
大乗仏教の論釈500部を著されたのでした。

その著述の中の『浄土』では浄土三部経を論じています。
そののはじめに「世尊、我一心、帰命尽十方無碍光如来、
願生安楽国」とあり、お釈迦さまお聞きください。私は尽十方無碍
光如来
=阿弥陀如来におまかせし、安楽国=浄土に生まれたい
と願いますと、天親菩薩ご自身の信心を打ち明けられています。

そして天親菩薩は、修多羅(シュートラつまり経典のこと)にって
真実の道を示され、他力の大誓願をあらわされました。

横超とは、他力のことです。つまりにとびえることであり、
自力の修行では仏に到達することが困難である私のために他力
大誓願(如来の本願)はおこされ、私たちを必ず仏に成らせると
誓われていることを意味します。
  
また、それは、経典に依ってというところからも、自らの行動や思うことは
すべて如来が与えてくださったものであり、ただ如来におまかせしている
天親菩薩のお心がよく味わえます。


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